深い思考を促す教科横断の問い(総合)

鉄道廃線跡から考える

 

 重要なインフラである鉄道の廃線や未成線を素材に考えさせます。ここでは戦後から現代に至る鉄道建設に注目しますが,歴史分野に焦点を当てて大正から昭和戦前期に注目することも地域教材として面白いものになるでしょう。

Iレベル

・鉄道の廃線・未成線を建設の状況と廃線の経緯によって分類しなさい。
 ※MECE(ミーシー)の考え方を説明してそれに当てはめてみます。
・1960年以降に廃止された鉄道を地図に表示し,地域的特徴について述べなさい。
 ※北海道,九州の炭鉱地帯に多くの廃線があることから,産業構造の変化との関連を指摘することができます。同時に,エネルギー転換の時期(1960年代)と,鉄道廃線の時期(1980年代以降)とがずれていることについてもさまざまな要因の考察が可能です。
・建設されなかった鉄道(未成線跡)の活用例を調べなさい。(写真は福岡県の未成線である油須原線予定地を走る「赤村トロッコ」)
   


Cレベル

・戦後のローカル線では日本国有鉄道ではなく日本鉄道建設公団(鉄建公団)による建設が進められた例が多くある。このような方法がとられた理由を簡潔に述べなさい。
・この写真は鉄建公団により建設が進められている途中で異常出水により建設が断念されたトンネルである。トンネル工事に出水はつきものであるが,どのような場合なら,トンネル建設が断念されなかったのだろうか。できるだけ多く考えなさい。(写真は熊本県・高森町の高森涌水トンネル公園)
熊本県の高森涌水トンネル公園 熊本県の高森涌水トンネル公園 熊本県の高森涌水トンネル公園 熊本県の高森涌水トンネル公園 

・廃止を免れ存続した鉄道も経営は厳しい。鉄道存続のために,各地域ではさまざまな努力が続けられてきた。他方で,ローカル線運賃を割高にすることを条件に開業の可能性があったのに割増運賃に反発し結局鉄道が開業されなかったような例もある。これは部分最適を求めた結果全体最適を実現できない「合成の誤謬」の実例とも言える。各地の鉄道存続運動の成果と限界,新線開業や存続を阻害する要因について述べなさい。(写真は千葉県のいすみ鉄道)
いすみ鉄道    

Eレベル

・鉄道建設・存廃を事例として,国と地方の関係について述べなさい。
・「自分は利用しないが鉄道は残せ」と主張する住民や自治体の心理・論理について分析しなさい。