深い思考を促す教科横断の問い(総合)

本州四国連絡橋ルートは何本が適当か

本州と四国を結ぶルートを素材として考えます。架橋開通の年の観光客数増加などは,地理の試験問題としても繰り返し取り上げられてきました。
本州と四国を結ぶ橋の3つのルート

写真は左から順に,明石-鳴門ルート(明石海峡大橋),児島-坂出ルート(瀬戸大橋),尾道-今治ルート(新尾道大橋)。

本州四国連絡橋の説明(本州四国連絡高速道路株式会社のウェブページ)

 それぞれの橋の開通の経過は次の通りです。写真と地図上の位置を結びつけたり,地図上に示した橋の完成年を答えさせたりするのはIレベルの問題です。

 ご覧のように,着工から完成までは大体10年の歳月を要します。着工予定の直前に石油危機が発生して延期になったり,景気が良いなら良いで資材の高騰や作業員の人手不足も起こったりするわけです。数十年の間には社会情勢も変わりますので,計画時と完成時ではちぐはぐなこともよく起こります。現在JRの在来線が走っている瀬戸大橋は新幹線も通せるように設計されていますが実現の可能性はありませんし,神戸-鳴門ルートでは,四国側の大鳴門橋は鉄道も通せる設計なのに本州側の明石海峡大橋は鉄道が通せない設計となっていることも,ちぐはぐの例でしょう。「着工から完成までの期間が短いほど重要視されているルートである」との見方も成り立つようです。その期間が最も短いのは児島-坂出ルートであり,鉄道併用で開通したことからもそれは裏付けられるでしょう。これらを分析しまとめさせればCレベルの問題になります。
 さて,ルートは何本が適当かについては,もちろん決まった正解があるわけではありません。3本もあるのはムダ,という意見に対しては,災害時の代替ルートとなる意義も主張できるでしょうし,橋が架かったことで四国からの人口流出が進んだという面もあるかもしれません。自分がもしも国土交通大臣だったら,どの橋から着工命令を出すか,その理由は,財政的裏づけや効果は・・・,ということを総合して考えさせれば,Eレベルの問題にできるでしょう。本州側と四国側の住民の立場でディベートさせるパフォーマンス課題にもできるのではないでしょうか。