深い思考を促す地理の問い
択一式でも,知識の組合せで解く問題をつくることはできます。かつて高校3年生の地理で出題した問題です。
Cは食用穀物の自給率が非常に100%をはるかに超えていることから,穀物輸出国であるフランスである。自給率が100%を超えるというのがどういうことなのか考えましょう。食べきれずに捨てているなどと誤解している人はいませんか。
Bは果実類の自給率が極端に低いこと,その割にいも類の自給率が高いことから,高緯度に位置し土地のやせているイギリスと考えられる。ただし,それでも穀物の自給率は100%近い(一時期よりも自給率が上がっている)ことにも注意が必要です。
Aは食用穀物や肉類・果実類など全体的に自給率が低いことから日本と考えられる。ただし,日本の自給率が何でもかんでも低いと考えるのは,米や野菜の自給率の高いことを無視した低いレベルの決めつけです。むしろ,米や野菜の自給率が高い理由を考察し説明できることが大切です。
※どの国のどの農産物の自給率が何パーセントということをすべて暗記することは不可能で非効率的です。緯度,人口,気候区分,産業構造の高度化などの学習内容(基本的な知識)を組合わせて考えることで,さまざまな問いに答えることができるわけですね。この問題で言うと,国名を選択式でなく記述式で答えさせると,まるで「データブック・オブ・ザ・ワールド」の暗記のように世界中の国のデータを知っておかないといけないかのようなことになり,出題側にとっても無理があります。国名は選択式として,そのように判断した理由を記述させる問題とすることも考えられます。選んだ理由も選択式にもできますが,選択式の場合は消去法というテクニックが普通ですので,記述式としたほうが生徒の判断力を見るにはより適しています。
次からは,ICEモデルに当てはめて地理の問題を検討していきます。