深い思考を促す教科横断の問い(歴史×理科×数学)

暦の科学


 暦は,いろいろな教科で教材にできます。たとえば,理科(地学)では,太陽・地球・月の公転から,その位置関係や,うるう年が4年に1回(正確に言うと400年で97回)置かれる理由の説明を考えさせることができます。日本史(戦国時代)では,本能寺の変が旧暦6月2日の未明に起こったことと新月との関係を考察することができます。日本史(明治維新)では,旧暦明治5年12月3日が新暦明治6年1月1日とされた切替のタイミングを考察させると,政府の財政事情にも関係することに気づくことでしょう。
 ここでは,旧暦とは「太陰太陽暦」を,新暦とは「グレゴリオ暦」を指すものとしています。暦の種類を細かく羅列すると,そこでやる気をなくさせますし,細かい知識を教師が問いすぎると知識注入型(つまり,教師の方が生徒よりも知識を多く持っていることをもって優位に立とうとするスタイル)の授業になるので,生徒に調べさせた上で,なぜこうなったのか考えさせ議論させることで,生徒の思考力を伸ばす授業に近づけることができます。
 特に,ユリウス暦からグレゴリオ暦に切り替わったのは16世紀の後半,日本では戦国時代のことで,南蛮船や南蛮人との交流が増えた時期にあたります。「記録に残された日付がどの暦によるのか」に深入りしすぎたり,「グレゴリオ暦とグレゴリウス暦は同じものか」という疑問に長い時間をかけて対応するのは,授業の本質を見落とした失敗に陥る恐れがあります。

月食の時の月

Iレベル

・19年間に7回の閏月を置く旧暦と,400年間に97回の閏年を置く新暦とを比較して,歴史上のできごとで,旧暦に関係すると考えられるものを挙げなさい。

・旧暦に基づく年中行事や通過儀礼の例をあげなさい

 

Cレベル


・本能寺の変を描いたドラマで,旧暦6月2日の未明の場面で新月(月が出ていない闇夜)のはずなのに月が描かれ,後に行われた再放送ではそのシーンがカットされるという事態が発生した。なぜこのようなことになったのか考察しなさい。
※「本能寺の変の日は新月だから闇夜だった」と知っているドラマの制作者があえて満月を登場させたとすれば,マスメディアの視聴者に対する姿勢について考えさせる材料になるでしょう。ネットでの話題を受けて再放送ではそのシーンをカットしたとすれば,ネット社会について考える素材ともなります。
 
・グレゴリオ暦の採用時期はヨーロッパ各国の中で違いがある。その理由を考察しなさい。
※ヨーロッパキリスト教社会で旧教・新教の対立が激しかったことと関連付けて考えると面白い素材になります。


Eレベル

・旧暦に限らず,尺貫法やヤード・ポンド法などが用いられてきた理由を考察しなさい。

・イスラム礫,マヤ暦など,新暦(グレゴリオ暦)以外の暦が用いられている例を調べ,なぜその暦が用いられている(または用いられていた)のかを考察して,その暦を用いて新聞を作成しなさい。