深い思考を促す地理の問い

新幹線4時間の壁

新幹線の乗車時間が4時間を超えると,航空機のほうが選ばれるようになる,という説があります。これを「新幹線4時間の壁」と呼ぶことにします。新幹線で4時間とは,概ね800~900km余りの距離で,例えば「東京-広島」「東京-函館」「大阪-鹿児島」のような区間が該当します。
  (写真左:山陽新幹線東京行き「のぞみ」,写真右:北海道新幹線東京行き「はやぶさ」
 新幹線乗車時間と航空機搭乗時間とでは当然航空機のほうが短いわけですが,都市の中心から空港までのアクセスに要する時間や,搭乗手続き,手荷物検査などに時間を要するので,トータルの所要時間ではあまり変わらないものになります。模式的にかくと,次のようになるでしょう。

 もちろん,中心駅と空港との距離やアクセス方法によって,見込む時間は変化します。中心駅自体が都市の中心市街地とは離れている場合もあります。空港アクセスに不安があれば早めに行かざるを得ません(これは広島空港の不利な点のひとつです)。飛行時間も,東から西への飛行の方が,西から東への飛行よりも長くなります。(地理の作例 5 参照)
 新幹線は4時間ノンストップというわけにはいかないので,途中で乗客の乗り降りがあることになります。それが嫌な人は航空機を選ぶでしょうし,自由席に飛び乗れるメリットを重視して新幹線を選ぶ人もいるでしょう。携帯電話・Wifiの使用や,座席のシートピッチを重視するかもしれません。選ぶ理由は人によって異なるので,正解が一つではない問題をつくる素材として好適です。新幹線4時間の壁を素材に,問題をつくってみましょう。

Iレベル
新幹線で概ね4時間の区間を表に整理しなさい。

Cレベル
東京-大阪間は新幹線で2時間30分の距離であるが,この区間で航空路線も成り立っている理由を考察しなさい。どのような場合に航空機を利用するのだろうか。  ※大都市どうしだから成り立つのか,対東京だから成り立つのか。
・新幹線の乗車時間が4時間以下の場合で,航空路線が成り立つための条件を考えなさい。 ※人口,空港の位置,産業構造などが関係しそうですね。

Eレベル
・今後,新幹線が建設される予定の区間で「新幹線4時間の壁」について予測しなさい。