深い思考を促す教科横断の問い(総合)

表紙画像(2016年)から

 


ここでは地元ということで広島カープと広島市民球場を取り上げていますが,野球ファンあるいはカープファンかどうかとは関係ありません。生徒に考える必然性を感じさせられるテーマを選ぶことや,野球ファンではなくても考える意味があると思わせられるかどうかが大切です。
画像 問題例 留意点
Iレベル
広島市民球場の入場者数推移をグラフ化しなさい。

Cレベル
球団創設1950年から25年目となる初優勝1975年と25年ぶりとなる今年のリーグ優勝におけるファンの心理を比較しなさい。

Eレベル
プロスポーツチームのない都市でのチーム創設が地域の経済,政治,文化,街づくり等に及ぼす影響を考察し,具体的に提案しなさい。
地域の関心に応じた課題であることが大切。カープファンでなくては答えられない問題ではだめ。知識の量に差があるのは当然です。知識量に関係なく,あるいは詳しい人の知識が他の人の学びをも促進するような仕掛けがあるとよいでしょう。

他のプロスポーツや他の地域へ拡げて考えさせると,レベルの高い問いになります。
Iレベル
それぞれの場所はどこか。

Cレベル
左は2005年,右は2015年の1類側スタンドの様子である。観客の入り具合の違いがある。その理由を考察しなさい。

Eレベル
プロ野球の地元球団の活躍が,地域の経済や人々の生活に与える影響について考察し,観客動員を増やし地域の経済や文化をさらに活性化させる方策を提案しなさい。
時間軸で比較する例。左は2005年の旧・広島市民球場,右は2015年の現・広島市民球場(マツダスタジアム)です。スタンドもロッカールームも老朽化した旧・広島市民球場での広島カープの成績は低迷していましたが,その時期に,新球場建設が進められたことを忘れることはできないでしょう。
 この事例は,以前に比べて盛り上がったことの分析ですが,衰退の分析もありえます。これはなかなか難しいことです。できない理由を探すことのほうが大変ですし,人間は自分を正当化しがちだからです。
Iレベル
この場所はどこか。

Cレベル
写真右下は,旧・広島市民球場のライト側スタンドの一部である。旧・市民球場が解体される際に,この部分だけが解体されずに残されたのはなぜか。また,この部分の活用の可能性について述べよ。

Eレベル
このスタンドのような歴史の舞台を残そうとする人の心理と,残すことのメリット・デメリットについて述べよ。
旧市民球場については,解体に反対する団体もありました。ライトスタンドの一部が残されましたが,それは本当に一部であり,高さはもともとの客席が30列ほどあったうちの下側半分足らずに過ぎません。ここがプロ野球の本拠地だったことをしのばせるものではありませんが,「一部しか残さなかったから伝わらないのだ」という理屈もありえます。スタンドの一部を残したことは,本当に広島の戦後を伝え続けることになるのでしょうか。