アクティブ・ラーニングのブレーキ (1)  (2)  (3)  (4)  (5)

アクティブ・ラーニングのブレーキ(4)多忙感

    「日本の教員は諸外国に比べ業務量が多い」との調査結果がある。OECD・TALIS2013では,日本の教員の1週間当たりの勤務時間は,参加国中最長で,平均が38.3時間のところ日本は53.9時間。業務の量が多いのは調査結果から明らかだ。「業務量がこんなに多く勤務時間が長いのに,アクティブ・ラーニングのような新しい取組みを進めるのは無理,教員の数を増やさなければ無理,との論調もある。しかし,問題は教員の数にあるのか?そして,やりがいとの関係つまり,多忙と多忙感は同じものなのだろうか。
 たとえば課外活動の指導に使った時間は平均2.1時間に対し日本は7.7時間。一般的事務業務に使った時間が平均2.9時間,日本5.5時間。これらが,日本の教員が諸外国よりも特に多くの時間を使っている業務である。一方で,指導(授業)に使った時間は,平均19.3時間に対し日本は17.7時間とむしろ少ない。「外国に比べて長い」と言うなら,日本では授業時間の負担はむしろ少ないと言わなくてはならないことになる。
 教員の仕事は授業が中心なのにそれ以外の仕事が多くて授業に注力できず授業改善が進みにくい,また生徒と直接向き合う時間が確保できない,だからそれ以外の仕事はそれぞれのプロにアウトソーシングしよう,というのが教員の業務量縮減の考え方で,「チーム学校」もその考え方に立っているはずである。しかし,部活動を指導したい教員は,部活動時間が長くても(つまり多忙であっても)そこに多忙間を感じない。逆に,国際比較では決して長くない授業時間のほうに多忙間を感じてしまう。部活動をやりたくない教員はその逆であろう。
 そして教員には,業務量を減らすことよりも,自分で思うようにやることを優先してしまうこだわりの気持ちの強い人も多い。課外活動の担当者を増やして曜日によって分担する,というようなことをなかなかできない(したくない,しない方がいいと思っている)ような教員がその例である。また,「授業と部活動指導」で「部活動指導は外部指導者の活用で教員の負担を軽減する」という施策が現にありながら「部活動は他人にゆだねるよりも自分が指導したい」と考えるような発想である。
 教師は,チームの力やシステムによって成果が出たと考えるよりも,自分の力で部活動の成果が出た,入試合格につながった,という満足感や称賛を求めがちである。 教員のこのようは発想がある以上,「業務量を減らすことが直ちにAL充実につながる」という期待を持ちすぎないほうがよいだろう。

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