追い込み時期のアドバイス

  「頑張っているのに成績が伸びない」と悩む時期だ。勉強して学力がついても,それがすぐに模試の成績に現れることはない。昨日やったことが今日の模試に出たから点が取れた,というのは実力が付いているからではなくて偶然であり,これで模試の成績がよかったとしても入試合格のためには無意味である。そういう,中学生の定期試験前のようなレベルの思考は今すぐやめよう。

  実は学力は,勉強時間に比例して同じペースで伸びるわけではなく,急激に伸びる時期と伸び悩む時期とがある。伸び悩む時期のことを,プラトーという。意味は「高原状態」である。スランプという言い方もあるが,客観的には落ち込んではないものの伸び悩みの状態,主観的には絶不調と思ってしまう状態である。 この時期に「どうせやっても伸びない」と思ってやめてしまうと,本当ならその後にくる急激に伸びる時期を目前に,自分からチャンスを逃すことになる。プラトーがあるのは,頑張っている証拠。最初から頑張っていない人は,「勉強してない割には今回は点がよかった」というレベルで満足してしまう。これでは,入試本番では通用しない。

  大学は,途中の模試の成績が良かったか悪かったかは全く考慮してくれない。また「やればやるほどどんどん伸びる」といつも思っている人は,いわばサッカーを始めたばかりの子どもがどんどんうまくなっているようなものだ。そんな子どもより,「おれはいくら練習してもうまくならないなぁ」と悩んでいるJリーガーの方が絶対うまいに決まっている。つまり,プラトーを経験しないような人は,あるレベル以上の入試で合格する段階ではないのである。

  プラトーの時にはどうすればよいか。成功(=合格)のイメージを持ち続けること,そして愚直になることをすすめる。スポーツ選手なら,会心のヒットを打った時を思い出しながら素振りや基本の型をひたすら繰り返す。受験生なら,単語帳や用語集を何も考えずに見つめることである。基礎練習をするときには,何も考えるな。感情をなくすことが,プラトーのストレスに耐えるのに適した防衛機制である。考えるのは,入試問題を解くときでよい。

  「何でもかんでも考えるのがよい」というのは,「すべてのことには原因と結果があり,あらゆることを合理的に説明できる」と考えてしまう「利口なバカ」のやり方。(「利口なバカ」については,入試が終わったら養老孟司氏のベストセラーを読んでください)。
  苦しいときが伸びるとき。なかなか信じられないでしょうが,真理です。「何を覚えた」とか「どこに受かった」とかということ以上に,自分の目標に向かって頑張ったんだという経験こそが,一生の財産になります。