たとえば,「定年退職後の男性が地域活動の中心となる」というのは,高齢社会の「善」の部分として注目されがちである。しかしそこは定年後の男性の所属感を満たしたり社会的承認を得られる場でもある。高齢者が影響力を持ち続けることがわずらわしいと考える若者は,議論するためのエネルギーを無駄に感じてそっと都会に出て行くかもしれない。この場合「高齢者対若年者」「男性対女性」という二重の圧力がかかるので,特に女性の方が田舎を離れるであろうことは容易に想像できる。東京では待機児童が多く地方では保育園に入りやすい,という事実があったとしても,それだけで人口は動かせない。