研究の結果,仮説は否定されることもありうることで,それもまた研究の成果に違いない。ところが,研究でなく実務では,仮説が否定されては困る,とばかりに,無理のある仮説をもとに施策が進められる場合がしばしばある。
 たとえば,地下鉄建設の乗客数見通しが過大であったり(少ない需要見通しでは建設ゴーサインを出せない),人材登用における自薦システム(自分から名乗りをあげる人はそうでない人より意欲的で適任に違いないという前提)などがその例である。
 需要予測が少なくても経営が成り立つ,あるいは需要予測が少ないので建設を止める,という仮説検証は行われず,見通しが甘かった,という反省が繰り返されてきた。本当の問題は,甘い見通しであることは皆わかっていたのに,「そうでなくては困る」という結論ありきの空気が支配していることで,PDCAのCは,ここでも機能していない。