10月21日(木曜日) 晴。
最初にYear10のホームエコノミクスを見せてもらいました。今日の授業は調理実習で,生徒たちがパンを作っています。どんなパンを作るかは各自が決めていて,ある子はシナモン入り,別の子はガーリック入りを作っています。パン生地をこねるわけですが,日本ならまな板というものを使ってその上でこねるところを,テーブルや調理台の上で直接こねています。これにはちょっとびっくり。一人の男子が,ガーリックのチューブの匂いをかがせてくれました。やっぱり,ガーリックの香りでした。
こねられた生地は容器に入れます。大きさは15センチ×7センチくらいでしょうか。その内側にグリースを塗り,こんろで温めたあとオーブンで焼くのです。焼き上がりまでを1時間でやるのですから,相当忙しい作業です。
先生は忙しく動き回っています。あとで話を聞くと,「1時間だから忙しいわ」ということでした。私の学校では調理実習は4校時つまり昼食の前に行われますが,ここでは特に決まってはいないようです。実習費は一人25ペンスで,授業中に先生に支払います。一人の男子生徒がガーリックブレッドを食べさせてくれました。少しガーリックがききすぎていますが,温かくておいしかったです。
コーヒーブレイクのあとはYear10のビジネススタディです。ここには教育実習生がいました。授業の内容は,株価を変化させる要因の学習です。株価のことをshare priceと言っています。NHKのニュースの副音声では株のことはstockと言っていたように思いますが,shareという言い方もあるんですね。
黒板には,株価が変化する要因がまとめられています。
1.Profit
2.Industrial Relations
3.New invention --new drug--
4.Take over
5.Interest rate
6.Economy
まず生徒たちに1988年9月30日の株価リストが配られ,5種類の株を選びます。その時,株価の合計が10ポンド以下になるようにします。そののち,1990年の株価を調べて比較するのです。
私もよく似た授業をしたことがあります。私の場合は,最近の株価リストを配って,資金1000万円で1銘柄だけを購入し,1カ月後の株価と比較するというやり方でした。もちろん,どの株が上がるかは生徒にも私にもわかりません。ゲームとしては面白いですが,儲かったか損したかということに目が向きすぎる欠点があります。今度この学校のやり方でやってみようかと思っています。
授業のあとで,教育実習生と話しました。彼女は先週からこの学校に来ているそうですが,驚きと恐怖の毎日だと言っていました。私などからみると,英国の生徒は先生の言うことはよく聞くし,活発に発言はするし,どこが恐怖なのだろうと思ったりするのですが,彼女が生徒だったときとくらべるとずいぶん違っていると言うのです。
しかし,教育実習で学校の本当の姿を知るということは,教員になってから知るよりもはるかに幸せなのは確かです。日本だと2週間くらいの教育実習で,しかも自分の母校か大学の附属校で実習することが多いでしょうから,実際に教員になったときには知らないことだらけです。彼女は教員養成カレッジで40パーセントの時間を過ごし,残りの60パーセントは学校で実習するそうです。
今日は午後からもビジネススタディを見ました。やはりYear10です。MS-WORKSのスプレッドシートを使ったスーパーマーケットの経営の分析でした。こう書くと難しそうですが,実際は時給いくらで何時間働いたら人件費はいくらか,時間外労働したらいくら増えるかという計算練習のようなものです。
Hours 10
Rate of Pay 2
Total Pay 20
over time 2
Rate of Pay 3
overtime pay 6
Total pay 26
こうしてトータルペイを求め,さらに週3ポンド上乗せしたらいくらか,通常の時給を10パーセントまで上げるとどうなるかなどを計算していくのです。と言ってもスプレッドシートですから,計算式を入力していくわけです。これをビジネススタディと呼んでいいのか少し違和感もありましたが,機械的でなく意味をもたせた計算練習と考えれば,確かに将来の仕事につながる学習であると言えそうです。
10月22日(金曜日) 霜がおり寒い朝。
Carr Hillでの研修前半の最後の日です。英国の新学期は9月に始まっていますが,今日はハーフタームホリディ(1週間)前の最後の日で,生徒は休みです。授業日数は年間195日となっていますが,生徒が登校するのは190日で,あとの5日は先生だけが登校して校内研修をします。今日はみんなネクタイなしのラフな格好です。
スタッフルーム(職員室)での全体会のあと,小グループに分かれました。私は環境教育のグループに入りました。計6人です。日本でも環境教育をしているかと聞かれたので,リサイクル,核廃棄物,森林破壊,酸性雨などを扱っていると答えました。環境問題は,どこの国でも大きな問題です。そして,国境のない問題でもあります。
ランチはいつもより品数が多かったです。パイ,チップス,ビーンズ,にんじん,アップルパイ,紅茶です。「研修は退屈だけど,ランチだけはいい」とデヴィッドが言いました。同感です。
午後は学年ごとに分かれての討議です。活発に意見が出ますが,よくしゃべる人とそうでない人はやはりいるようです。午後3時には会議は終わり,先生たちは休暇を楽しむために帰って行きます。中にはイタリアへ旅行するという人もいました。私はと言えば,あすから連合王国団のみんなとマンチェスター,エディンバラ,ダブリンを回ります。ランカシャーに戻るのは11月6日です。