4.日本経済の諸問題

(3)日本経済の諸問題

c.資源・エネルギー

 日本が高度経済成長期にあった1972年,ローマクラブが『成長の限界』と題する報告書を発した。資源を使いたいだけ使って工業を発展させてきたやり方が,いつまでも可能なわけではない,という警告だった。
 1973年には,第4次中東戦争をきっかけに石油危機が生じた。この石油危機は,のちに第1次石油危機(石油ショック)と呼ばれるようになる。第1次,というのは,1979年にイラン革命をきっかけに再度の石油危機が訪れたからである。
 第1次石油危機の後,政府は省エネルギー政策を進めていった。また,それまでアメリカ・イスラエル一辺倒だった外交を,石油産出国(産油国)の多いアラブ諸国に配慮したものにしていった。石油などの資源をほとんど持たない日本では,石油資源の節約と,石油の安定輸入が欠かせないからである。

 さて,石油・石炭・天然ガスなどのエネルギーは,一次エネルギーという。これは,自然界に存在するままの状態ということである。それを,人間が利用するのに便利なように姿を変えてやることが行われる。たとえば石炭や石油から電力を起こすことである。このように,人間に都合のいいように姿を変えたエネルギーを,2次エネルギーという。
 石油や石炭,天然ガスは,何千万年・何億年もかけて,つくられてきた。これらは,古代の木や草が長期間にわたって高い圧力を受けてできたもので,「化石燃料」と呼ばれる。それを人間は,最近のほんの何百年間かで大量に燃やしてエネルギー源にしてきた。これらの化石燃料が燃える際,二酸化炭素(CO2)などの化合物ができる。このCO2などは,大気圏上部に膜を作り,「宇宙空間からの光線は通すが,地球から出る熱を逃がさないようにする」という影響をもたらす。ちょうど温室のビニルハウスのような役割である。そこでCO2などを,「温室効果ガス」と呼ぶ。また,化石燃料が燃やされてできる窒素酸化物や硫黄酸化物は,強烈な酸性を持っている。これらの物質が雨粒と一緒に降り注ぐと,その雨に当たった森林や石の彫刻が強い酸性のためにぼろぼろになってしまう。このような雨を「酸性雨」という。さらに,フロンガスの問題もある。フロンとは,冷房の触媒やスプレーなどに使われる物質で,それ自体は人体に悪影響は持っていない。しかし,フロンガスが大気圏上部に達すると,そこの大気の膜を破壊して,穴が開いたような状態をつくってしまう。地球の大気は,紫外線など有害光線が地球に届くのを防ぐ役割を持っているが,オゾンガスにより穴が開くと,紫外線量が増加して皮膚ガンの原因となる心配がある。このようにオゾンガスがあける「穴」を「オゾンホール」という。

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