4.日本経済の諸問題

(3)日本経済の諸問題

a.中小企業

中小企業の定義
 中小企業基本法(1963年)では,中小企業の定義は,資本金や従業員数によっている。すなわち,資本金や従業員数が一定以下の規模である企業を中小企業とする。ただし,その基準は製造業とサービス業とで異なり,製造業よりもサービス業のほうが,中小かどうかの境界となる資本金や従業員数が少ない。つまり,製造業や建設業では,資本金3億円以下又は従業員300人以下のいずれかに当てはまる企業を中小企業とするが,小売業やサービス業では資本金5000万円以下または従業員50人(小売業)100人以下(サービス業)を中小企業とする。これは,小売業やサービス業でそれだけ中小企業の割合が大きいことを意味する。
 企業数では全体の99パーセント,従業者数でも80パーセント近くが中小企業である。

中小企業の形態
 次の3つに大別される。
(1)地場産業・・・広島でいうと熊野の筆や府中の家具などの伝統産業。全国的に見ると福井県鯖江市のめがねフレームなど。
(2)大企業の下請け・系列企業・・・製造業の大半はこの形態。最先端の自動車や電気製品の部品のネジが,小さな家内工業の工場でつくられていたりする。
(3)ベンチャー・ビジネス・・・ベンチャーとはventure(冒険)のこと。技術やアイデアを活かしたビジネス。大企業・大組織では決定に時間がかかったり過去の成功体験にとらわれて新しい分野に挑戦できない場合がある。最近は,大企業内で社内ベンチャーを立ち上げる例も多い。一般にベンチャー・ビジネスは将来の成長が不安視されて融資を受けにくいが,そういう企業に積極的に投資して将来の利益を期待する動き(ベンチャー・キャピタル)もある。

中小企業の課題
 大企業と中小企業との関係は,「二重構造」とよばれる。中小企業は大企業にくらべ,資本力,生産性,収益性,賃金などの面で,不利な状態にある。二重構造の原因としては,次のようなものがある。
特定の大企業に系列化される。
 資金・原材料・技術などの面で援助を受けられる半面,系列外に有利な条件があっても取り引きできない。原材料は高く買わされ,製品は安く買いたたかれるようなことがおこる。
 とくに不況期には,親会社からの単価切り下げ要求が厳しく,注文をうち切られることもある。これにより景気が変動しても親会社は従業員を増減させずに下請けへの注文を変動させて景気変動の調整弁とされる。「メーカー−1次下請け−2次下請け−3次下請け」というふうに何層にもなっていて,メーカーは,1次下請けを管理することで全体の下請けを管理でき,必要に応じて取引を伸縮することで自らは在庫を持たすに生産調整できる。
担保が不十分なため,銀行からの融資が受けにくい。
特に好景気の時は労働者の大企業志向が強まり,求人が困難になる。
 大企業に対抗して労働力を確保するために,企業の体力以上に高賃金を出さざるを得なくなり,経営を圧迫する。

最近の中小企業
 ベンチャーでは,注目分野には資金が集まってブームになるが,ブームが去ると一挙に冷え込むという変動の激しさがある。また,下請けとして部品を供給してきた企業は,NIES諸国との激しい価格競争にさらされている。

目次に戻る