通貨量の調整を通じて景気の変動を緩和し,物価の安定をはかるために,中央銀行がおこなう政策を金融政策という。その主なものは次のとおりである。
公定歩合政策(金利政策)
公定歩合とは,中央銀行が市中金融機関に資金を貸し出すときの金利である。公定歩合の変動は,銀行の貸出金利や預金金利に影響する。不況期には公定歩合を引き下げる。すると貸出金利も下がるので貸出が増加し,流通通貨量が増加して消費や投資の増加が期待できる。景気過熱期は公定歩合を引き上げる。貸出金利が上がるので貸出が減少し,流通通貨量が減少する。
現在の公定歩合は0.1%ときわめて低く,実質ゼロ金利と言ってよい。こうなる前に景気が回復するはずだったのにそうはならず,この先どうしたらいいのか手詰まり状態だ。逆に公定歩合が最も高かったのは第1次石油ショックの後で9.0%という時期があった。
公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)
中央銀行と市中銀行との間で,有価証券(手形や債券)の売買をおこなうこと。公開といっても,誰もが参加するわけではない。不況期には市中銀行がもっている有価証券を中央銀行が買い取る(市中銀行から見ると売ることになる)。これを買いオペレーションという。中央銀行から市中銀行へ資金が流れるので,流通通貨量が増加し,景気を刺激する。景気過熱期は逆に売りオペレーションをおこなう。
預金準備率操作(支払準備率操作)
預金準備率とは,市中金融機関の預金量のうちの一定割合を支払準備のために中央銀行に預けなければならない,その割合のことをいう。不況期には支払準備率を下げる。すると市中銀行の手持ち資金が増加するから,貸出が増加する。景気過熱期は逆に支払準備率を上げる。
窓口規制(窓口指導):かつては日本銀行が市中金融機関に対して貸出増加枠などを行政指導していた。これは 日本特有の規制だったが,金利自由化によって1991年に廃止された。
ポリシー・ミックス
景気対策は金融政策だけでおこなうわけでなく,財政政策や為替政策を組み合わせることで効果を上げる。このように複数の政策を組み合わせて効果を上げることをポリシー=ミックスという。景気の状態とそれぞれの政策の関係は,下表の通りである。
景気の状態 | 景気過熱・インフレ時 | 不況・デフレ時 |
---|---|---|
金利政策 | 公定歩合引き上げ | 公定歩合引き下げ |
公開市場操作 | 売りオペレーション | 買いオペレーション |
支払準備率操作 | 支払準備率引き上げ | 支払い準備率引き下げ |
財政政策 | 税率引き上げ 財政支出削減 |
税率引き下げ 財政支出拡大 |
為替政策 貿易政策 |
円高に誘導して 輸入を促進 |
円安に誘導して 輸出を促進 |