4.日本経済の諸問題

(3)日本経済の諸問題

f.物価と消費者保護

物価について
 物価には,消費者物価と卸売物価がある。戦後の日本では,卸売物価の上昇率よりも,消費者物価の上昇率の方が高い傾向が見られた。その原因は,工業生産では技術革新により生産コスト削減が進んだために労働コストつまり賃金の上昇分を吸収できたのに対し,人手に頼る小売では,賃金上昇がそのままコスト増につながったためである。

インフレ(インフレーション)
インフレとは,物価全体が上昇し続ける状態を言う。一部の商品だけが値上がりしたとか,ごく一時的に値上がりしたがすぐに元に戻ったような場合は,インフレとは言わない。

インフレの種類
インフレの種類はさまざまだが,主に需要側に原因があるものと,主に供給側に原因があるものとに大別できる。

(主に需要側に原因があるもの) デマンド・プル・インフレ
・所得増加にともなう消費者の需要増加
・赤字国債発行による通貨供給増加
・銀行の貸し出し増加(オーバーローン)
・輸出拡大にともなう国内通貨量の増加

(主に供給側に原因があるもの)コスト・プッシュ・インフレ
・労働コスト上昇
・輸入原材料上昇
・管理価格

インフレの影響
 物に対して,お金の価値が下がるのがインフレである。そのため,お金で持っている人は損をし,もので持っている人は得をする。お金で持っているとは,現金や預貯金をいう。物で持っているとは,土地や家・工場である。貯金をしている人は,利息以上に物価のほうが上がっていくので,貯金を下ろしてみたら前より買えるものが減ってしまっている。ということは,先に物を手に入れた(たとえばローンを組んで家を買った)人は,支払う金額は決まっているから,賃金や物価が上がれば,ローンを返すのがどんどん楽になっていく。逆に,年金をためて生活しようとする人は,年金は大して増えない(多少は物価にスライドして増えるが)のに,生活必需品も含めて物価は上がり続けるから,生活が苦しくなる。
 さて,インフレになりそうだと思ったら,人はどういう行動をとるだろうか。これから物価が上がると思えば,貨幣価値が下がらないうちに土地や財を買ってしまおうと思いがちだ。だが,「自分はインフレになる前にうまくやったぜ」と思うこの心理それ自体が,実は全体の物価上昇をさらに激しくする。このような心理を,「インフレ=マインド(インフレ心理)」という。

デフレの影響
 インフレーションとは逆の影響がある。つまり,借金をしている人はいつまでも借金が減らず,物価は下がってお金の価値は上がる。だから金がない人はものが安く買えていいが,いずれは賃金の引き下げにつながり,所得も減ることになる。所得減少への不安から,住宅ローンなどを避けるようになり,不況はますます進行する。その悪循環がデフレ・スパイラルとよばれるものである。

消費者問題
クーリング・オフ
 消費者が売買契約を結んで代金を支払った後でも,一定期間内なら無条件で契約解除できる制度。訪問販売,通信販売,割賦販売などで可能。

PL法(製造物責任法)
 商品の欠陥や説明不備によって損害を受けた場合,製造業者に過失があってもなくても,消費者に対して責任を負うことを定めている。

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