3.金融と財政

(1)金融

b.日本の金融の特徴

 金融とは資金の融通のことである。融通とは,余っているところから不足しているところへ貸すことである。
 金融はいろいろな視点から分類できる。自己金融と外部金融,自己資本と他人資本,直接金融と間接金融などである。
 日本でこれまで主流だったのは間接金融であった(およそ80%以上)。そのため,銀行から借り入れる金利の高低が企業活動に大きな影響を与えてきた。また政府の金融政策の中で,公定歩合操作(金利政策)がとくに重視されてきたのもそのためである。しかしバブル経済期からは株式や社債による資金調達がしだいに増えて,直接金融の割合が増している。

直接金融:企業が直接,一般投資家から資金を調達するもの。株式や社債という方法で資金調達する。
間接金融:企業が金融機関を通して資金調達するもの。銀行に預金された資金が企業に貸し付けられるという方法。
金融の分類
銀行の業務
 大きく次の3つがある。
預金業務:当座預金,普通預金,定期預金など
貸付業務:手形貸付,当座貸越など
為替業務:送金為替,当座振込など

 当座預金とは,企業が決済のために利用する預金で,小切手や手形による出し入れをおこなう。日本では無利子である。現金そのものが動くわけではない。また,小切手で支払いを受けた企業は,自社の当座預金に入金して次の支払いに備える,ということをくり返す。そのため,金融機関全体で見ると,最初の預金(本源的預金)の何倍もの規模で貸出が可能になる(預金通貨が創り出される)。これを信用創造という。信用創造の総額の計算方法は次のとおりである。

 本源的預金が1000万円,日銀への支払準備率が10%の場合

本源的預金  1000万円
預金総額=



=10,000万円
支払準備率  0.1

 信用創造総額=預金総額−本源的預金
=10,000万円−1,000万円
=9,000万円

日本の中央銀行
 日本の中央銀行は,日本銀行である。その最高意思決定機関は日本銀行政策委員会である。
通貨発行の上限枠内で,日銀政策委員会が発行量を決定する。これを最高発行額制限制度という。その上限枠を決定するのは財務大臣である。
 日本銀行の業務は大きく3つある。
(1)唯一の発券銀行である。日本銀行券(紙幣)を発行する。現在発行されている紙幣は1万円札,5千円札,2千円札,千円札の4種。このうち5千円札は2004年に現在の新渡戸稲造から樋口一葉に,千円札は現在の夏目漱石から野口英世に切り替えられる。なお補助貨幣(硬貨)は財務省が発行している。
(2)銀行の銀行である。市中金融機関(民間の銀行など)に資金の融通をおこない,市中金融機関からの預金を預かり,有価証券の売買をおこなう。有価証券の売買が「公開市場操作」とよばれるものである。
(3)政府の銀行である。国庫金の出納(すいとう)や,国債の発行・償還などの業務をおこなう。例えば広島大学の学生が納入した授業料は,広島大学の収入になるのではなく,日本銀行を通じて国庫に入る。

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